研究目的
- ダンスに内在する構造を操作可能な形式、すなわち舞踊語彙のカタログと自動振付のアルゴリズムで記述
- 舞踊動作を自動的に生成して3DCGでシミュレーションするソフトウェア、すなわち自動振付システムを開発
- ダンス創作の教育実践で活用
- 独創性と芸術性を評価されうる舞台上演可能な作品制作の支援
研究意義
動画データベースの意義
舞踊を対象とした大規模な動画データベースは、以下のような目的に活用することができます。
- 教育 : ダンサーの学習、技法の継承のために
- 創作 : 新しい作品の振付、演出、制作のために
- 記録 : 優れた作品、伝統的な技法の保存のために
- 解析 : 技法の分析、作品の研究のために
- 娯楽 : 実演、作品を鑑賞して楽しむために
- 批評 : 実演、作品を鑑賞して評価するために
3次元モーションデータの意義
3次元モーションデータは、2次元の動画データ(通常のビデオデータ)と以下の点で異なります。
- 視点を自由に変えて(変えながら)再生できる
- 動きを現実とは異なる人体モデルにあてはめて再生できる
- 動きを分解したり合成したり、自由に加工できる
- 動き(振付や演出)をシミュレーションすることができる
- 動きを数値で分析することができる
- データを標準化すれば、動きや振付のデータを広く共有できる
本研究の目標は、モーションキャプチャシステムで採取した舞踊の3次元モーションデータを標準化し、これをネットワーク上に蓄積してアーカイブ化することで、教育、創作、批評など舞踊芸術をめぐる活動を広く支援することにあります。
長期的には、演出シミュレーションシステム、デジタルミュージアム、デジタルダンスシアター、自動振付システムなどの開発も視野にいれています。
研究成果
本研究は、ダンスのジャンルとしてクラシックバレエ(以下、バレエ)、コンテンポラリーダンス、ヒップホップダンスを研究対象としましたが、中心的に取り組んだのはコンテンポラリーダンスです。5年間の研究で、データ、アルゴリズム、ソフトウェアのそれぞれについて、以下のような成果を上げました。
データ:バレエ、コンテンポラリーダンス、ヒップホップダンスそれぞれのジャンルのプロダンサーの実演動作をモーションキャプチャシステムで収録し、これを加工して分節化し、ダンスを構成する短い基本動作を蓄積単位とする三次元モーションデータベースを構築しました。コンテンポラリーダンスの動作収録は、振付家・平山素子(連携研究者)の指導メソッドに基づいています。
アルゴリズム:「分析合成型振付」と名付けた手法に基づき、モーションデータを用いて舞踊動作を生成する手法を整理しました。その上で、コンテンポラリーダンスに関しては、短い舞踊動作を生成するアルゴリズムを複数考案しました。さらに、ヒップホップダンスの自動振付のためのアルゴリズムを考案しました。
ソフトウェア:“Whole-body Motion Synthetic Dance Composer”および“Body-part Motion Synthesis System”と名付けたソフトウェアを開発して改良を重ねました。このソフトウェアの実用性を評価するために、日本、米国、英国の大学で舞踊を専門とする学生を集めて複数回の実験を行いました。また、舞踊評論家による評価実験も行いました。その結果、学習・教育用および創作支援用のシステムとしての有用性が実証されると同時に、改善のための課題が明らとなりました。