本文へスキップ

 テーマ・解題 THEME

テーマ(3年):「経済政策に正義(公正)を求めることは可能か、あるいは妥当か」

<解題>
 統治行為には、古来、権威を裏付けにした公権力の行使の側面があった。その具体的な現れが、ホッブスのリバイアサン、マキャベリの権謀術数などとなって 登場する。他方、現代の民主主義社会では、そうした上意下達型あるいは圧力的な統治行為あるいは政策体系の策定・施行ではなく、政策の決定過程に多様な民 意を反映することが求められている。しかし、その民意には、多数派の意見は込められるけれども、それは必ずしも、正義にかなった公正なものとは限らず、そ れどころか、多数派の横暴に走る可能性もある。民主主義は、衆知を結集する手段として機能せず、衆愚に陥ることもある。こうした課題を秘めながらも、国民 生活に直結する経済政策に正義(公正)を求めることは可能か、あるいはどうすれば妥当なものとなるのか。
 経済政策の価値基準をどのように設定するかについては、マックス・ウェーバーの価値自由(Wertfreiheit)論争以来の議論の展開・蓄積がありますが、いま話題のハーバード大学のサンデル教授の論点なども手掛かりに、若者らしい切り口で、論じてください。

<参考文献>
マイケル・サンデル(鬼沢忍訳)『これから「正義」の話をしよう:今を生き延びるための哲学』早川書房、2010年5月、¥2,300+税.
田村哲樹『熟議の理由:民主主義の政治理論』勁草書房、2008年3月、¥2,800+税.
小松隆二編『公益学のすすめ』慶應義塾大学出版会、2000年4月、¥2,400+税.
ジェイムズ・M・ブキャナン(小畑二郎訳)『倫理の経済学』有斐閣、1997年2月、\2,500+税.
ジェイムズ・M・ブキャナン(加藤寛監訳)『自由の限界』秀潤社、1977年7月.



特別緊急テーマ(2年、3年いずれのゼミナール・パートでも、チャレンジできます):「われわれは今回の大災害からいかに復旧・復興・再生すべきか。そもそも、こうした災害(地震、台風など)や気象・環境変動などにどう向き合うべきか、それに対してどう備えるべきか。」

<解題>
 格言「天災は忘れたころにやってくる」通り、2011年3月11日午後、東日本太平洋沿岸地方に巨大地震が起きた。その揺れのすさまじさに引き続く津波 (tsunami)の恐ろしさ、さらには福島原発の制御不能から、東京電力の計画停電への波及を経験すると、現代文明の繁栄にどっぷりと漬かっていたわれ われ人間(日本人)は自然の威力の前では、個人的だけでなく社会的・組織的にも無力感・絶望感にとらわれる。20世紀のわが国の例としては、関東大震災 (1923年9月)、伊勢湾台風(1959年9月)、阪神淡路大震災(1995年1月)などがあるが、もちろんそれに止まらない。海外の例も枚挙にいとま がない。
 人類は、それぞれの生活圏でこうした天災・自然災害とともに歩み、生活環境を構築・整備し乗り越えてきた。人類はどのような創意と工夫・努力で、こうし た災害を克服してきたのか。そこから引き出される有効な備え・準備・対策は、どのようなものなのか。いま求められている課題は何なのか。
いまだ未開拓な問題領域ではあるが、創意に富んだ問題提起や実践例を期待したい。

<参考文献>
河田惠昭『津波災害:減災社会を築く』岩波新書、2010年12月、¥756.
兵庫県阪神淡路大震災復興フォローアップ委員会『伝える:阪神・淡路大震災の教訓』ぎょうせい、2009年3月、¥1,980.
寒川旭『地震の日本史:大地は何を語るのか』中公新書、2007年11月、¥800+税.
シリーズ災害と社会(Man and Society in Disaster)弘文堂、各巻¥2,730(税込)
  第1巻:大矢根淳ほか編『災害社会学入門』2007年12月
  第2巻:浦野正樹ほか編『復興コミュニティ』2007年12月
  第3巻:吉井博明ほか編『災害危機管理入門』2008年4月
  第4巻:永松伸吾『減災政策論入門』2008年11月
  第5巻:菅麿志保ほか編『災害ボランティア論入門』2008年12月
  第6巻:山下洋介『リスク・コミュニティ論』2008年12月
  第7巻:田中淳ほか編『災害情報論入門』2008年12月
  第8巻:田中淳ほか編『社会調査でみる災害復興』2009年3月
鎌田慧『原発列島を行く』集英社新書、2001年11月、¥735.