パキスタン地震 被災者救援活動 視察報告

子島 進

 2005年10月8日の地震発生から、3ヶ月が経過した。この間、パキスタン国内での死者数は7万人を越え、行方不明者も9000人と推計されている。さらに標高1000メートル以上の高地に暮らす被災者に対しては、降雪という「第二の死の波」が押し寄せている。このパキスタンを、12月24日から1月5日の日程で訪れた。現地視察の速報としてお読みいただきたい。なお本文は、2006年2月刊行の『もうひとつの南の風』(シャプラニール会報)に掲載された文章に、若干手を加えたものである。

 なお、この調査は、科研費「アジア・太平洋地域における自然災害への社会対応に関する民族誌的研究」(研究代表者:国立民族学博物館 林勲男助教授)の一環として行なったものである。現地調査は、日本のNGOである「シャプラニール=市民による海外協力の会」、ならびにパキスタンの下記NGOの協力を得ることで行なうことができた。記して感謝したい。

 コサールが主として活動をおこなっているカットケール村の様子(2005年12月29日)。

 

 今回、シャプラニールが現地パートナーとする二つのNGOの協力を得て、その活動現場を訪問した。

・Kohsar Welfare and Educational Society(以下コサール。コサールとはウルドゥー語で「山脈」の意)。

ActionAid Pakistan(以下アクションエイド)

 パキスタンでは、今回の震災救援活動において、大小さまざまなNGOの活躍が目覚ましい。NGOという言葉も、日常用語として定着するにいたっている。

 アクションエイドのイスラマバード事務所。

 コサールは、カシミールのカットケール村とその周辺において、学校建設と運営を中心に活動している。1997年にカットケールの村人が設立した、文字通りのローカルNGOである。一方、アクションエイドは、42カ国で活動を展開する国際NGO。パキスタンでは、1992年より活動を開始している。今回の地震では、各地にオフィスを設置し、本格的な救援活動に乗り出している。

 カシミールのローカルNGOであるコサールと、日本のシャプラニールの橋渡し役をおこなっているのがPNAC(Pakistan National AIDS Consortium)である。 PNACはHIV/AIDS対策を行うNGOの連合体で、約300団体が加盟している。被害の深刻だったカシミール地域では20の団体が活動しており、コサールもその一つである。

 イスラマバードのショッピング街(ジンナー・スーパー)。夜も大勢の人でにぎわっています。

 この二つのパートナーの活動に加えて、より大局的な状況についても把握しておく必要があるだろう。すでに、10月27日のシャプラニール報告会で、事務局の藤崎さんは「現場が直面している問題・課題」として以下の点を指摘している。

・テントやシェルター(寒さ対策)の不足

・支援機関間のコーディネーション不足

・土砂崩れなどによる道路の寸断

・社会的弱者(子ども、女性、老人、障がい者)に対する配慮の不足

 これらの状況が改善されたのか、あるいは未解決の課題にとどまっているのかについても触れることとしたい。

 藤崎さんによる発表の様子(詳しくは、シャプラニールのHPをご覧ください)。

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