2016年10月30日 ゴム動力自動車コンテスト

 高崎市で開催されたコンテストに参加してきました.ゴムの力だけ走る車のコンテストです.今年で15回目だそうです.
 昨年度から理工学部の予算をもらって学生主体のプロジェクトを立ち上げて行なっています.その話を含めて.

◆プロジェクト立ち上げ

 1年生向けの講義の中で,3回で終わるPBL「ゴム動力車競技」を行なっています.厚紙とアクリル棒と輪ゴムだけで車を作って走らせるというものです.実施費用が安くて,イメージしやすくて,教員があまり手をださなくても学生が自主的に動ける...そんなことを考えてこの課題に決めました.パスタブリッジとか,卵落としとかのイメージです.

 厚紙なんて...と学生にバカにされるかと思いきや,これが真剣に作ると奥深い.こちらの予想を越えるモノを作る学生もいます.私が作った試作機も最長7mくらいは走ったんですけど,14m走る車とか,分離型とか,プラモデル顔負けの造形とか,すごいです.見ていて面白いです.

 一方,3年生の実習科目の履修者が少ない.実験は半減して180人中40名弱だし,インターンシップも似たようなもの.実習をやりたいって言う声がある割に,これってどうなのよ?
 ものづくりをする実習科目があれば変わるかもしれないけれど,ものづくりの講義科目を立ち上げるのは人員的にも設備的にも無理.加工指導できるスタッフの人数が全然足りないし,学生が同時に加工するための設備も足りない.それに講義だと受講者全員が最後まで受講できるレベルに合わせないといけないから,自由な課題にはできない.

 そんなわけで,課外活動でやってみることにした.ただし,部活にして学生だけにすると回らないかもしれないので,教員がある程度手をさしのべる感じにしようと思った.部活と講義の間くらいを狙う.そして,「学生のモチベーションをあげる」という研究テーマとして予算申請した.

◆1年目

 予算も確保できて,協力教員もいて,よしっと思ったら,肝心の学生が集まらなかった.「自由にやっていい」というのは,実は苦しい.与えられた仕事をこなすのは悩む必要がないから楽.それはわかっている.以前,後輩が会社で「新しい企画を考えろと言われて悩んでいます」と言っていた.いきなり会社の金で好きなことをやって良いと言われても,最初は何をして良いか分らなくて困るってことはあるだろう.このプロジェクトでも一度顔を出すのだけれど,じゃあ,これを自分で考えてごらん,とうながしても次は来ないってことが多かったな.悩んで自分で考えたものが,実現できたときの楽しさを実感して欲しいのだけど.

 そんな中,高崎市でゴム動力車のコンテストがあるという情報があり,製作例の1つとして紹介すると,学生達が乗ってきた.コンテストはちょっと敬遠していたのだけど,分りやすく明確な目標であることは確か.スローガンとしても使いやすい.山車ロボットコンテストを高校の先生達が生徒の動機付けに使っているのは,こういうことですよね.

 目標が決まったものの,活動時間があわない.学生にスケジュール管理を任せたら,連絡が来なくて待ちぼうけということも何度かあったなぁ.で,一度会い損ねると次にいつ集まるか連絡が来ない.あまり教員がせっつくように連絡してもなぁと思って連絡するのを躊躇する.そうすると,活動に間が空いてしまうわけだ.うまく回っていないなぁと思いつつも,何とか途切れないように活動を続けて,秋には走る車を製作.人は乗れそうになかったけれど,50mくらいは走行した.動いたときは感動的だった.よくゼロから作り上げたものです.すごいです.

◆コンテストの思い出とか

 話変わって,コンテストと言えば,大学院生のときに名古屋で大手メーカー主導の新しい「ロボットコンテスト」が立ち上がり,助教授の先生から「出てみたら?」という無茶ぶりがあった.前々からコンテストに興味はあった.もともとカラクリ人形とか好きだったし.が,制御理論の研究をしていた我々は,実験装置を使って制御則の検証実験を行うことはあっても,ハードウェアをゼロから作った経験がほとんどない.う〜ん.それも課題がバスケットボール.第1回目のくせに難しい!!結局,私はほとんど手が出せず,後輩達が頑張った.私自身は達成感も得られず,いわゆる挫折の歴史.それ以来,コンテストには近づかないようにしていた.ちなみにそのコンテストは,第1回目ということもあって,他のチームも惨憺たる結果だったと記憶している.資金力があったチームは,ラジコンヘリを使って(←自作ロボットじゃないじゃん)操縦ミスで大破させていたなぁ.

 そんな感じでコンテストを避けていたのだけれど,東洋大に来てからは,コンテストの主催者側に入っていたり,PBL科目を考えたりしてきた.やってみるということが大事な気がする.そして,良い結果になるかどうかではなく,過程が大事だと思うようになった.(ちなみに,上記のコンテストで最後まで頑張った後輩の1人は現在,他大学で精密なロボットハンドを研究して,設計・製作もしている).コンテストの課題自体は,その後に直接続かない気もするけれど,経験自体は残る.たぶん,それでいいんじゃないかな.

◆2年目

 話を戻して,昨年度末に継続して活動していた2名の学生と教員3人で,今年の打合せをした.続けるって学生が言ってくれたので,今年も予算申請することにした.1年目の反省をもとに,活動日を決めて,メンバーを募集した.1年生が集まった.で,昨年から作りはじめていた2号機を製作する.動力伝達部分も,クラッチも,ステアリングも大変だった.けれど,案外何とかなるもんだなぁと思った.実験をしていくと問題も出てきて,こういう問題があるから,ここの設計に注意しなきゃいけないんだなとか,実感した.ナットの緩みとか,タイミングベルトのテンションとかね.人が増えて,プロジェクトも回りだし,夏休みは毎日朝9時から外で走行実験だ.毎日,真夏の屋外って高校の部活以来じゃないか.暑い...そして,秋学期が始まってからは学生達の講義がない4時限目に活動していたのだけど,季節は秋をすっ飛ばして急速に冬に近づき,今度は寒い!日が落ちるのも早くなって薄暗闇の中で実験をしていました.

 何とか,コンテストまでに(学生が!)ブレーキ搭載を間に合わせ,(教員が)運搬の手配も整えて,コンテスト参加.朝8時高崎集合.おそろいの東洋大Tシャツで,あぁ,部活っぽい.

 結果は,2回の走行とも70mを完走したのだけれど,他のチームが予想以上に速かった!我々のチームはほぼ自己ベストに近い17秒前後で70mを走ったのだけれど,優勝チームは8秒くらい.他も10秒前後.
 一見してゴムの量が圧倒的に違っていたな.

 その結果で学生がどんな感じになるか,(私みたいにへこたれるかなぁと)ちょっと不安だったけれど,来年もリベンジするぞ,来年も続けるって言っている学生が多くて,心強かった.

◆プロジェクトの感想

 正直,結構な時間をこれに注いだと思う.だけど,頑張る学生達の姿を見ていると嬉しいし,嫌なことも忘れる.授業ではないので,学生を評価したり,無理に何かを身につけさせたりする必要もない.授業のように全員に同じ目標を達成させる必要もない.失敗してもOK.むしろ,失敗して学ぶ経験が貴重.学生数が多いとこんなことはできない.制御工学と違って実際の設計や加工については,私自身も経験があまりないから,学生目線でつきあえるのかもしれない.そんなわけで,総じて楽しんでいる.もともと,私がやってみたくて(見てみたくて)立ち上げた企画だし,最近は学生達が自立して動き出していて,それもまた良い.

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