東洋大学RoboCupチーム

RoboCup Japan Open 2003 新潟大会 中型機リーグ 試合報告

期間: 2003年5月1日〜3日
場所: 「朱鷺メッセ」(新潟市万代島)
報告者: 松元明弘


上記大会に参加するために4月29日から新潟に来ております. 会場はオープンしたばかりの「朱鷺メッセ」で, 佐渡行きのフェリー乗り場に隣接した新しい展示場です. すぐ隣には日航ホテルがオープンしました.

公式な情報(試合結果を含む)は, RoboCup日本委員会のページ をご覧下さい.


中型機リーグの報告(参加者としての記録)

5月1日から予選が始まり,我々の参加している中型機リーグは, 以下の8チームの参加です. 今回はこの8チームの変則総当たりで, 予選を1日2試合ずつ2日間計4試合行い, 上位4チームが5月3日の決勝トーナメントに進むというものです.

我々東洋大学のRoboCupグループは,今まで UTTORI United として 宇都宮大学・理化学研究所と共に合同チームでRoboCup大会に参加してきましたが, 今大会からは東洋大学単独で Orient というチーム名で参加しています.

我々のロボットの構成は以下のとおりです.

Rook	主にGK.今大会ではFWとして活躍.
	3自由度独立の全方向移動機構.全方位視覚.
	Linux使用.UTTORI2000以来の古参.
Mamiya	MFまたはGK 四輪独立駆動型の全方向移動機構.全方位視覚.
	Linux使用.UTTORI2002にデビュー.
Jupiter	MF 三輪独立駆動型の全方向移動機構.全方位視覚.
	画像処理にHALCONを使用.Linux使用.今大会デビュー.
Gonta	MF Windowsコントローラ構築の評価用として採用.
	お古の二輪駆動機構を再利用.USBカメラ,
	IEEE1394のモータコントローラ.今大会デビュー

チームメンバーは以下の通り.

以上7名.


以下は,個人的感想も含んだ,試合の報告です.

初日第1戦  vs 電Q 3-0 で勝利
得点者
Mamiya 1
自殺点 1
Jupiter 1

共にロボットがスローな動きでやや低調な試合. スロースターターの我々にとってはありがたい相手. 相手のミスや故障に乗じ,幸先のよいスタートを切った.

しかしながら,試合中,Mamiyaのバッテリーが落下. これが原因かI/O制御をするRitechボードのD/A部分が昇天, また車輪の空回りも発生し,試合後必死の復旧作業.


初日第2戦 vs FH Musashi 6-4 で勝利
得点者
Rook 6

強力なバネを利用したキック機構によるループシュートができ, 動きの速いチームとの対戦. キックオフ直後に長距離シュートを打たれることが続き,すぐ0-3になる. その間,Mamiya の不具合で退場し,その対応中に,佃「王子」の判断により RookをGKからFWに変更したおかげで2点得点.
後半からMamiyaが合流し,Jupiterを急場のGKとして,RookはそのままFW. 相手の退場者が多い間に単独ドリブルで得点したり, 相手の強襲キックがRookに当たってその跳ね返りの得点するなど, 大量6点をもぎ取り,下馬評を覆す勝利で試合終了.

試合後,ぬいぐるみの生地をかぶせてかわいい動きをしたGontaに対して, 九州朝日放送のタレントアナウンサ(女性)が ぬいぐるみを発案した三浦さん,瀬下さんの2人の女子学生にインタビュー. 5月中旬に福岡ローカルでRobot関係の番組で採用される可能性あり.

また予選試合後,夕方18:30頃から,NHK新潟ローカルの生放送が入り, FH Musashiの対戦相手として画面に登場. 東洋大学という名前もいれてもらう. 新潟は東洋大学の創立者の井上円了先生の生まれた地であることから, 番組を視聴したOBや父兄も多数いるものと期待される.

初日終了時点で,Orientは8チーム中暫定1位. 我々自身がもっとも驚いている状態.


予選初日の暫定順位
チーム 勝ち点
Orient 6
EIGEN 4
Muratec 4
Trackies 3
FH Musashi 3
WinKIT 2
Fusion 0
電Q 0

(ここまで,5月2日11時記)


予選2日目

第1戦 vs Osaka Univ. Trackies 2003 5-0で勝利
得点者
Rook 3
自殺点 2

UTTORIの時代から今まで一度も勝ったことのない相手. Trackiesはこの大会から三輪の全方向移動機構を採用,重量約25kgと巨漢. デンソーに製作を依頼したという車体の到着が大会の直前ということもあり, ソフトウェアが開発途上で,しかも現地ではUSBのトラブルにあうなど 昨日から調整不足.昨日よりは改善されたものの, 全方向移動機構の駆動方法には我々に一日の長あり.
特にRookはボールの判別,ボール後ろへの回り込みなど 機能をフルに活用し大活躍. 前任者 好田剛介君(現,安川情報システム)および 今大会担当者 佃君の努力の成果が今大会にて一気に開花した.
他のロボットに関しては,Mamiyaは足回りの遅さは相変わらずであるが, 比較的安定した動きを見せた.Jupiterは「不動」のGKとして参加した. Gontaはかぶせたぬいぐるみのおかげで,昨日同様女性ファンの心をつかんでいた.

この試合の結果,RoboCupに参加するようになった1997年以来,大阪大学に初めて勝利. 明日最終日の決勝トーナメント進出を決定した.


第2戦 vs WinKIT 0-9 で敗戦

相手は昨年世界大会準優勝チーム.今回も動きがよいのであるが, ここまで試合相手に恵まれず勝ち点を伸ばせていない状態.
相手のスピードについていけず,また頼みの綱のRookが電源トラブルで ほとんど出場できず,点を重ねられる.
Mamiyaはずっと出場していたが,相手のスピードがMamiyaのスピードを上回り, うまくディフェンスすることができなかった.
Gontaは試合途中からJupiterに代わってGKになる. ボールを見つけようとくるくる回るだけの動作であったが, 相手のシュートを防御すること2回.それなりの貢献をした.


予選試合結果
順位 チーム名 勝負数 勝ち点
1位 Muratec 3勝1分 10
2位 Orient 3勝1敗 9
3位 WinKIT 2勝2分 8
4位 EIGEN 2勝1分1敗 7
5位 Musashi 2勝2敗 6
6位 Fusion 1勝3敗 3
7位 Trackies 1勝3敗 3
8位 電Q 0勝4敗 0
(得失差など正式結果は大会ホームページ参照)

(ここまで,5月2日18時記)


5月3日 決勝トーナメント

本日から祭日のため,朝早くから多くの観客でごった返す. (2万人くらいか?)

決勝トーナメントの対戦結果は

第1試合 10:00-  Muratec vs EIGEN  3-6
第2試合 11:00-  Orient vs WinKIT  0-6

と,共に予選では3位と4位のチームが勝利し決勝戦に進出した.

以下に,準決勝第2試合 Orientの対戦のみ報告する.

Orientは故障したRitechボードを元のMamiyaに戻し, Ritechボードの生き残った機能であるDIO部分を使って Mamiyaのキック機構を使用することとした.
Jupiterにはキック機構がついていないので, チーム全体の機能向上にはやむを得ない措置であると考えたわけである. むしろ発想の転換であり,学生の機転のよさに感心する. その判断後,昨夜のうちにJupiterの動きの確認作業をした.
設計上は最高速3m/sで,車輪(オムニホイール)のすべりはあるものの, 画像系と制御系の連携がやっとできるようになったので, Mamiyaが「不動」のGKとし,JupiterをMFという方針で試合に臨んだ.

さて試合は昨日0-9で敗れた相手との再度の対戦である. Jupiterが試合に絡み最初は拮抗していたが, 5秒ルール・10秒ルールのよる退場やそれを免れるための一時退場などが重なった時に 点を重ねられ,キックしか動かないGKとしては防ぎようがなく,試合終了.
Rookはいい動きを見せていたが,移動速度は相手の方がやや上回っており, また相手を押しのけてドリブルをしてもすぐ別の相手が寄ってきて, シュート機会をもらうことはできなかった.
Mamiyaは目の前にボールがないのにキック機構を動かしていたことから, 画像処理において誤認識があった.
Jupiterはすべりはあるものの騒音と共に縦横無尽の動きを見せ,攻守に貢献した. 昨夜の判断が有効であったと考える. 本日0-6で留まったのはJupiterの活躍によるものである. ただし,Jupiter自身の問題として, 時折,周囲の黄色いライトをボールと誤認識することはあった. Gontaは巨体のロボットに囲まれてあまり仕事ができない状態であったが, Gontaの担当者の方は試合後に再び九州朝日放送の取材陣に囲まれた.


3位決定戦 14:00-  vs Muratec  3-5で敗退
得点者
Rook 3

強力なキックを持ち,しかも空中を高いボールと低いボールと 蹴り分けることのできる機構を持っているチーム. 企業の威信をかけて望んでいるチームは学生主体のチームと姿勢が違う. 画像処理の正確さ,2輪ではあるが正確にかつ高速に位置決めする車輪駆動と 技術的に優れている.決勝戦に進出してもふさわしいチームであるが, 準決勝ではOBも多数押しかけた慶応EIGENの勢いに押されたようである.

試合前,相手の好意によりGK用の全方位視覚を保護するためのアクリル筒をお借りし Mamiyaに設置する.強いライトの写り込みはあるものの無視できる程度であり, ボールの画像処理には特に支障がない.
準決勝でMuratecと対戦したEIGENは,昨夜アクリル版と金具を入手し, しかも金具を折り曲げるための万力まで入手してMuratec対策をしていた. これに比べれば,Orientは事前準備のなさを露呈してしまった.今後の課題である.

さて試合は,Muratecが試合開始直後に得意の速攻でいきなり2点をもぎ取る. ここで我々はサンドバッグ状態かと顔面蒼白.2桁失点にならないことだけを祈る. Orientとしては接近戦に持ち込み,相手のスピードを出させないようにするしかない.
この試合は,RookもJupiterも比較的堅調で, 特にRookは相手の「引き球」に食らいついて団子状態の時間を稼ぐ. そのうち,相手の隙間を縫って相手GKもチャージング気味に押し込み 一時は2-2の同点に追いつく.
Muratecは浮き球シュートや単独ドリブルで点を重ねるが, 終盤Rookが再び粘りから得点し,ここで試合終了. Orientとしては敗れたものの,運にも恵まれ大差にならず,大善戦であったと言える.

最終成績は8位中4位. 当初は単独チームでの参加の経験ができれば十分と思っていたが, 対戦結果も予想以上のものであった. UTTORI Unitedの技術の遺産を使ったとは言っても, ロボットを使う人間の側の準備や管理がなければロボットはちゃんとは動かない. そういう意味でもこのチームメンバーはよくやった. 学生たちの健闘を称えたい.


決勝戦 16:00-  WinKIT vs EIGEN  5-3
昨年度の福岡でのRoboCup世界大会の決勝戦の再現. WinKITがEIGENを下して,念願の初勝利.

(ここまで,5月3日18時記)


中型機リーグ決勝トーナメント 結果
順位チーム
1位 WinKIT
2位 EIGEN
3位 Muratec
4位 Orient


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written by Akihiro MATSUMOTO
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