◆椎間板ヘルニア
12月に入ってすぐのある日のこと.その日も普通に仕事をしていたのだが,夕方になって足が痛いなと思った.寝違いみたいな感じだ.夜,寝る前に足を伸ばしたり,回したりとストレッチをやった.翌朝,痛みがひどくなっている感じだった.気にせずに朝一から3コマ普通に講義を行う.今学期は台風で1回休みだったので余裕はないのだ.普通に講義はできた.が,講義の後,椅子に座ると痛みがひどくなり,30分と座っていられない.足を動かすと左足がふくらはぎまでびりりっと痺れるんだな.さすがに,これは気のせいレベルではない.話に聞いたことがある坐骨神経痛って症状だな.目を背けていられる痛みじゃないので整形外科に行った.待合室でも座ると痛いので立ったままで順番を待つ.順番がきて,さっそくレントゲンを撮ったが判らず.MRIを撮ることになった.
初MRIだ.磁気共鳴か.構造を全く知らないのだが,内部で大きなコイルが回っているのかなぁと大きな銅色のドーナツを想像してみる.金属は身につけないで,化粧も落としましょうとのこと(キラキラしている粉に金属が入っていてやけどする可能性があるらしい).レントゲンの放射線じゃないが,地場も見えないから「見えない力」への怖さは似ている.いや,基本的に力は見えないんだけどね.まぁ,接触していないのに伝わる力というか...いや,重力も接触していなくても作用するのだけどね.まぁ,非日常的なものだからね...そんなことはさておき,時計などを外して小部屋に入ると,白っぽい大きな円柱がごろんと横たわっている殺風景な空間だ.すると,担当の技師さんが,
「大きな音がしますから,これをしてください.」
と耳栓を渡してくれた.あれ?今耳栓したら,貴方の指示が聞こえなくなるのでは?と思いつつ,耳栓をしても何とか聞こえる指示にしたがって台に寝転ぶ.ベルトで固定だ.
MRIはすごい音がした.普段使っている電気モータや歯車の音とは違う無機質な音...いや,歯車も無機質なのだが...不連続な音だし,それが数種類切り替わったので,切り替わる度にMRI初心者には「壊れているんじゃないか」という不安がつきまとった.そのうちの1種類は特撮のビームの音のような気がした.ビヨョョョンって感じ.うわ〜,輪切りにされてしまう〜
閉所恐怖症ではないと思うけれど,それでも20分くらい狭い筒の中で異様な音を聞いてじっとしているのは,得も言われぬ不安がつきまとった.だって,叫んだって絶対隣の操作室には聞こえないしね(もしものときに押すボタンは渡されていたが).もちろん壊れていない...壊れているはずがない...そうだ,終わったらケーキを食べるぞ,モンブランケーキを買って帰るぞとつぶやきながら時が過ぎるのを待ったのだった.
で,医者さんの都合で2週間後に結果を聞いた.いわく,
「思った通りのところに,椎間板ヘルニアですね〜」
とのこと.MRIってキレイに見えてしまうものだなぁ.素人の私でも一目瞭然,椎間板の形が違うし,プニョっとはみ出ているじゃないか.痛みの原因はこれですねと.
「痛み止めを2種類出しておきます.胃薬も出しておきますね」
「あの,何かやったほうが良いことはありますか?」←ストレッチとか?
「ん・・・ないねぇ.」
「では,やってはいけないことはありますか?」←無理なストレッチとか?
「ん・・・中腰,かな.」
とりあえず,安静ってことかなと思って薬を飲んで痛みを抑える.薬を飲むとあら不思議,座っていられるじゃないですか...薬,すごい&怖い.
薬を飲んでみるものの,薬が切れる時間になると急激に痛みがぶり返す.夜7時半を過ぎると座っていられなくなって帰宅するという日々.ん〜,これはヘルニアタイマーだ.
1ヶ月経って再び医者へ.
「どうですか?」
「薬が切れると痛いです.」
「そうですか...(2種類のうち)どちらの薬が効いているのかな...」←私が聞きたい
「とりあえず,同じ薬を出します.期間がのびるので胃薬を増やしますね.」
これで終わってはだめだろう,私.情報を仕入れねばっ
「あの,動いても良いんですか?」
「運動?やって良いですよ」
「もしかして,腹筋とかやっても...」←上体に力を入れて曲げると痛いんだよ
「腹筋?良いですよ.むしろやってください」
「あ,でも痛いんですけど」
「痛い?どうして?ま,いいや,ちょっとそこの視察台に寝転がって」
ということで,運動部時代にやっていたのとはちょっと違うやり方を教えてくれた.早く教えてほしかった.
さらに1ヶ月後は,
「薬を抜いたりしても良いんですか?」
「え,全然,問題ないですよ!」
と言われた.何だ,三食忘れずに飲まなきゃいけないかと思っていた.実際,この時点では1種類を抜いても効果はあまり変わらなかった.
◆そんな状態で大雪
2回の大雪だ.それも見事に修論発表会,卒論発表会,大学院入試を直撃だ.むろん,休めるわけがない.
冬タイヤを持っていないので自動車出勤は無理.そもそも車は雪に埋もれているしね.
駅まで雪に埋もれながら必死に歩いて電車通勤だ.雪は軽く30cmくらい積もっていますが,長靴なんて持っていないぞ.唯一持っているロングブーツはハイヒールだから絶対転ぶだろうし.この坐骨神経痛の状態でバランス崩したら,体勢をキープできる自信がない...ということで,靴下を履いて,その上にビニール袋を履いてから,バスケットシューズを履く.靴は濡れても足は濡れない.これで長靴代わりだ(T_T)
仕事が終わって帰路.見事な積雪だった.学内の林の中では「こもれびの道」が雪で埋もれて見えなくなっていて遭難するかと思った.いや,同じキャンパスで一緒に仕事をしていた人達はどうして歩いていないんだ?何とか,転ばないように気をつけつつ,駅に着くと,つららをつけた電車がホームに到着だ.雪の中を頑張って走っている電車よ,ありがとう...その電車は雪のせいで踏み切りのセンサが異常検出するらしく,一旦停止しては目視確認してのろのろと動いていた.
さて,そんな大雪のせいで人生ではじめての雪かきをした.雪にスコップを立てて四角に切り取る感触が新鮮だった.だいたい,雪にスコップが刺さって立っているじゃないか!そして,雪かきをやって初めて判ったことは,雪をどこにおくのかということが問題だということ.パズルみたいだ.まぁ,この雪かきは結構な重労働だったのだが,なぜか動いたら坐骨神経痛は改善されていた.そうか,動けばいいのか!と思ったね.
でも,雪がとけて一週間,普通に座って仕事をしていたら坐骨神経痛の症状は逆戻り.いつになったら治るのだろう.あいかわらず,夜9時頃になると薬が切れて痛みが酷くなるので帰宅する.
まだまだタイマーは外れないようだ.
3月半ばになって,ようやくこのページを書くくらい座っている時間に余裕ができた.