ロボット学会編集委員のこと

2007年2月下旬にロボット学会の当時の次期会誌編集委員長からメールをもらいました.
 
「やあ,はじめまして」(←もちろんもっと丁寧な文です)
 は,はじめまして.面識はない,よな...
 
「編集委員やってくれないかな?任期は2年ね.旅費は出ないよ」(←もちろんもっと丁寧な文です)
 え,私?なぜ??
 
「それから,委員になるために,学会に入会してね」(←もちろんもっと丁寧な文です)
 
そう,私はロボット学会は会員ですらありませんでした.いまだに何故,私に話が来たかは不明のままです.
 
編集委員は経験豊富な人がやるものだと思っていたので私で良いのかなと思いましたが,まぁ,
これも経験だと引き受けてしまいました.

さて,ロボット学会の編集委員の主な仕事はつぎの2つに分かれます.

 1.特集号を企画すること
 2.小委員会の仕事をすること

 1.は,任期2年の間に,学会誌の特集号を企画して記事を集めます.私は「ロボットコンテストがもたらしたもの(仮)」で企画しました.1年目は宙ぶらりんだったのですが,2年目に急浮上.2009年11月に発行予定で,これを書いている2009年8月現在,執筆者からの原稿が到着し始めています.原稿を読んでいると,何だか嬉しく思います.
 2.は,広告とか電子化小委員会とか,小委員会ごとの仕事があります.私は「一般記事小委員会」.割り当てられた当時は,仕事内容もあまり明確でなく,楽な小委員会だと聞きました...が,世の中そんなに甘くなく,突然
「学会誌を面白くしろ」との天の声があり,コラムインタビューを次々に企画することになりました.私は始めたばかりのインタビュー担当になりました.0からスタートです.インタビューってどうやってやるんですか〜?
 これ以外のお仕事は2ヶ月に一度の委員会に出席すること,そのうちの一回くらいは,議事録を作成することです.

 真面目な記事や詳細は学会誌を見てもらうことにして,
インタビューでの個人的な感想などを少々.

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◆1人目「富士重工業 青山部長」
 スバル360の開発者 百瀬氏についてのお話を聞きに行きました.インタビュー時間...5時間くらい?夜の工場見学付き(←すごい.とても貴重な体験.楽しかったです.貸切の夜の工場ですよ!風力発電の巨大タービンとか,静かに並ぶゴミ収集車とか)
 とても気さくな方で,お話も面白く,挙句に執筆していただけることに...楽しみに行っただけになってしまいました.ありがとうございます.
 印象的だったのは,やはり百瀬氏の徹底した指導.青山さんのアイディアに対して,百瀬氏が理論計算を行ったというFAXも見せてもらいました.厳しいけれど,それだけ時間を割いてやった上での指導.まさに恐れ入りましたです.
 そして,インタビュー内容ではないけれど,整理のよさに驚きました.昔の資料もすぐに出てくる.「あれはね...」というなり,規則的にラベルが貼られた棚からすっと出す.百瀬氏が手を入れた図面なども次々に出てくる.あれは仕事の効率があがるだろうな.そして,部屋の壁に貼ってある部下の方々の「失敗しました」の反省文(?).何をどう失敗したかが書いてあって,同じ失敗をしないように促す.インタビューの内容以外もとても勉強になりました.

◆2人目「テムザック 高本社長」
 株式会社テムザックの起業について聞いてきました.インタビュー時間1時間.インタビュー時間が限られていること,また2回目ということもあっておおよその記事の流れを考え,質問事項を書いて持って行き,事前にお渡ししました.そのおかげで聞きたいことを聞くことが出来たと思います.
 とても魅力的な社長さんでした.気さくな口調の中にも,信念と自信がにじみ出ているように感じました.翌日,覚えているうちに一気に記事おこしをしました.メモに書いた要点を中心に構成し,ICレコーダで細かな点を修正しながら,一気に記事にします.5時間くらいかな.2ページを目指していたのですが,3ページ原稿になりました.
 出来上がったものを学生に読んでもらったら,「へぇ,面白い.それに,この社長,熱いなぁ!」と感心していました.読者の方にも伝わるといいです.

◆3人目「森政弘先生」
 ロボット専門の先生曰く,「雲の上の存在」であるロボコン博士の森先生です.編集委員のつてをたどってお願いしました.
 ドキドキしながらお会いしてみると,とても気さくな先生でした.自在研究所を訪ね,ご挨拶の後,まず玉露をいただきました.え,お茶ってこんな味がするものなんですか!私が今まで飲んでいたのはなんだったんでしょうか?と思うような濃くて甘いような深いお茶でした.そしてインタビュー開始.のっけから,1963年に製作されたロボットハンドの写真!私が生まれる前じゃないですか.そして,5本指ハンド.45年も前にこれですか!すごい〜!...でも,これは正直,ロボットにたずさわる者としてはがっくりきますよ.だって,45年前にこれだけ出来ていたわけですから.そんな衝撃から始まり,仏教の話や授業の話などをうかがいました.とても暖かい先生でした.インタビュー時間は3時間半.
 その週末,やはり,覚えているうちにと一気に記事おこしをしました.ICレコーダを高音質設定にしていたせいで1時間半でメモリがいっぱいになって止まっていました.ということで,後半は記憶だけが頼りです.それでも文字だけで3ページ.一緒に行った委員が撮影した写真を入れて4ページ.一般記事の上限の分量になりました.
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 今回,編集委員をやったことで,多くの方とお話しする機会ができ,とても良い経験をさせていただきました.特集号についても,委員の方々の助けをかりつつ,様々な方面の執筆者の方々にお引き受けいただくことができました.
 また,一般記事のインタビューについても,個人的にはお話する機会のないような著名な方々のお話をじかに聞くことができました.記事おこしは少し大変でしたが,とてもラッキーな経験でした.