NMR分光法について


どんな方法なの?

 多くの原子核は小さな磁石としての性質を持っています。これを“核スピン”と呼びます。

スピン1

もっとも代表的な核スピンは1H(プロトン)です。プロトンを強い磁場の中に置くと、磁場と同じ方向と反対方向の2つの向き をとるようになります。この二つの配向はそれぞれエネルギーの異なる状態であり、私たちが携帯電話やテレビ、ラジオで使用している“ラジオ波”と呼ばれる 電磁波を吸収することで、プロトンはこの二つの状態のエネルギーの低い状態から、もう一つのエネルギーの高い状態に移ることができます。この核スピンによ るラジオ波の吸収を核磁気共鳴(NMR)現象といいます。

スピン2スピン3


どんなことがわかるの?

化学シフトと分子構造

 核スピンが含まれる原子は、異なる原子間で結合をつくり分子が形成されます。このとき、NMRを観測する対象となる核スピンが、どんな原子と結合 を作るかによって、核スピンの感じる小さな磁場が変化します。NMR分光法は、このような非常に小さな変化を、感度良く検出することができるため、分子構 造に関する詳しい情報を得ることができます。

スピン4スピン5スピン6

手をつないでいる(結合している)相手によって、
吸収するラジオ波の周波数が変わります(化学シフト)。


磁気双極子-双極子相互作用と距離情報

 固体の中で空間的に固定された核スピンどうしの間には、磁石のように互いに引き合ったり、反発したりする力が働きます。これを、核スピン間に働く 磁気双極子-双極子相互作用といい、その大きさは核スピンの間の距離や、核スピン間をつなぐベクトルが外部の磁場に対しどのような方向を向いているかに よって変化します。固体NMR分光法では、このような磁気的相互作用を使って、固体中での核間距離を測定したり、分子の構造について調べたりすることがで きます。

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NMRと分子運動

 固体のように固い物質の中では、それを構成する分子もまた止まっているものと思われがちです。ところが、分子のように非常に小さな物質は、固体の 中でも回転したり、拡散したりといった分子運動をしています。このような個々の分子が行う運動が、固体全体としての性質や構造を決める重要な要因になって います。NMR分光法は、このような分子運動を調べることができる数少ない測定手法です。

スピン8


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