日本におけるノクシカタの広がり

林千賀子

 現在日本で取り扱われているノクシ・カンタ商品は30数種類で、年々その数を増やし続けている。商品数の増加とともに日本においてノクシ・カンタは多様化している。ノクシカタ商品を扱っている主な団体は、シャプラニール、ピープルツリー、第三世界ショップ、国際エンゼル協会、テレーザフェアトレードネットなどなど、、、である。また、日本で取り扱われている商品の代表的な現地生産団体は、BRAC、Aarong、Kumndini、KaruPalli、WCC、アーティザン・ハットなどの製品である。

 

 ノクシカタの多様化のポイントをあげると、@デザインの変化、A日本独自の商品の登場、B大型商品から小型商品へ(消耗品化) の3点を挙げることができる。

 

@デザインの変化

デザインの変化については3点あげることができる。

第1にデザインのワンポイント化である。ノクシカタは本来布地全体にびっしりと刺繍が施されているものである。それが、隅に小さくひと目でノクシ・カンタと分かる刺繍がワンポイント使いされる商品が増えてきている。

第2にモチーフのキャラクター化(簡略化)である。以前はバングラデシュの現地色、宗教性が強い商品がほとんどであったが、商品の開発化が進むにつれ、それらが薄れ、モチーフはデザインのひとつとしてみなされるようになってきている。

第3にカラーバリエーションの増加である。バングラデシュでは刺繍が施される布地は白・黒・赤がほとんどで、その他に見られる色も緑・黄・青と原色ばかりであったのだが、近年淡い色味の布地、渋い色味の布地が使われるようになってきている。第三世界ショップが扱っているノクシカタポーチの刺繍糸をみると、パステル調で日本向けにデザインされたと思われる。

以上のような変化を受け、デザインの幅が広がり商品の数が増えてきている。

 

また、タペストリー・クロスには様々な刺繍がみられるが、そのほかの商品には動物や植物が主に刺繍されていて、人や生活の様子などの刺繍は見られない。伝統的な文様ではなく、単純化された刺繍がほとんどである。多くみられる刺繍は花と象をモチーフにしたもので、以前福岡アジア美術館の五十嵐さんからうかがった、象の刺繍の商品は良く売れるという話から考えて、日本向けに象のモチーフを多く使用していると思われる。また、花の刺繍は象と同じく受け入れられやすいデザインであろう。中には、ピアスや手鏡、櫛など、明らかに日本向けにデザインされたと思われるものもある。

 

A日本独自の商品の登場

続いて、日本独自の商品の登場である。代表商品をあげるとケータイケース、眼鏡ケース、ポケットティッシュカバー、MDホルダーなどである。これらの商品のアイデアはバングラデシュで生まれるはずはなく、日本で出されたアイデアがバングラデシュにフィードバックされ、商品化されている。携帯ケースは日本からの強い要望で製作したものである。

 

B大型商品から小型商品へ

 日本ではノクシカタを敷物や物を包む際に使うという用途は考えられず、大きなノクシカタは壁掛けやタペストリーとして使うこと以外に用途がない。しかも、コレクターでない限り、観賞用のノクシ・カンタはたいてい1枚で十分である。一方、小型商品は手軽なので何点も購入できるし、消耗品として使用する人も増えてきている。ノクシカタに興味を持った人も気軽に手にでき、小型商品には人気が集まっている。

 

ノクシカタは変化を遂げて日本の文化のなかに根付いてきている。フェアトレードの拡大とともに、今後よりもいっそうの広がりを見せ、その形を変えていくことだろう。

 

以下は日本で発売されているノクシカタ商品である。

(写真は、シャプラニール=市民による海外協力の会カタログより)

 

1.タペストリー・クロス 
2.コースター
3.バッグ
4.ショルダーバッグ(ポシェット)

その他に下のような商品もあります。

5.パース

6.小物入れ

7.ポーチ

8.携帯ケース

9.ペンケース

10.きんちゃく

11.めがねケース

12.小銭入れ

13.ノクシカタケース

14.ブックカバー

15.ハンカチ

16.クッションカバー

17.ベッドカバー

18.通帳ケース

19.トラベルバック

20.ティーコージー

21.レターラック

22.シルクスカーフ

23.しおり

24.サシュ

25.ノースリーブ

26.ティッシュカバー

27.カードケース

 

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