1.アスベスト問題の基礎知識
 アスベストは天然産の繊維状鉱石であり、スレートなどの建築材、耐火材、ブレーキライニングなどの摩擦材等に用いられています。しかし、アスベストの吸入によって、石綿肺、肺癌、中皮腫などの疾病を引き起こすため、その使用に対し厳しく管理、規制が行われています。  特に、最近は建築物の解体や改修時、老朽化した建築物、自動車のブレーキなどからの一般大気環境へのアスベスト粒子の飛散が心配されています。  現在、大気中のアスベスト粒子数濃度計測は、空気をろ過して粒子を捕集したフィルタを位相差顕微鏡で見て数える方法(PCM法)により主に行われていますが、この方法は計数を行う作業者によって測定結果にばらつきが生じ、また結果を出すまでに日数を要するため、正確で実時間計測が可能な手段の実現が期待されていました。

2.アスベスト粒子検出の原理
 大気中の粒子をリアルタイムに検出する方法として、空気を吸引して管中を浮遊させて流したところにレーザ光を照射し、その散乱光を検出する方法があります。しかし、それだけでは、アスベスト粒子と他の粒子を識別することができません。今回開発した方法は、後方散乱に近い散乱角170度での散乱光の偏光がアスベストのような円柱状粒子と他の球状粒子で大きく異なるという、光散乱理論から導いた原理に基づいています。(下図)。 これを、通信総合研究所、東洋大学、エスコム株式会社(以下の新聞記事参照)で、アスベストをリアルタイムに測定できる装置を約10年前に、既に開発しています。



  開発したハンディ装置(下図)は、浮遊粒子を空気と共に吸引し、高電界によって配向させた
粒子がレーザ光を横切るときに出す散乱光パルスの二つの偏光成分を、同時に測定することにより、アスベスト粒子を識別、計数するものです。 
 この装置によってリアルタイムで測定された浮遊アスベスト粒子濃度は、従来の位相差顕微鏡観測でのPCM法によく一致します。(右下図)




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