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研究内容

有機溶媒耐性微生物と有用酵素

極限環境微生物について

 地球上には、多くの生物が生きていくのに適さない環境があり,極限環境と呼ばれています。高温の温泉、高濃度の塩水湖、砂漠、海底などは、極限環境です。しかし、このような世界にもしばしば微生物等が生育していることが知られています。このような過酷な環境で生育している微生物は、「極限環境微生物」と呼ばれています。また、極限環境微生物は極限環境において働く酵素を生産しており、このような酵素は「極限酵素」と呼ばれています。

有機溶媒耐性微生物について

当研究室では、極限環境微生物の中でも主に「有機溶媒耐性微生物」や「有機溶媒耐性酵素」に関する研究を行っています。有機溶媒の中には生物に対して生育阻害を示すものがあり、有機溶媒が存在する環境は、生物にとって極限環境の一つです。トルエンやキシレンなどの有機溶媒は、微生物にとって著しい生育阻害を示します。しかし、このような有機溶媒を大量に含む培地においても生育する微生物が発見され、その研究が広く行われています。

微生物の有機溶媒耐性機構

当研究室では、微生物の有機溶媒耐性のメカニズムを調べる目的で、大腸菌の有機溶媒耐性機構の解析を行っています。大腸菌は、比較的有機溶媒耐性度が高く、生化学的、遺伝学的知見が豊富なので、用いています。大腸菌の有機溶媒耐性には、有機溶媒を細胞外に排出するタンパク質(AcrAB-TolC排出ポンプ)が重要であることが知られています。当研究室では、この他の有機溶媒耐性メカニズムをに見出し、研究を進めています。
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有機溶媒耐性微生物の利用

有機溶媒耐性微生物は、有機溶媒が存在する条件でも有機化合物の生産や変換を行うことができます。このため、水には溶けにくいが、有機溶媒にはよく溶ける親油性物質(原料)を有機溶媒に溶解し、微生物培養液に添加して効率的な変換反応を行う試みがなされています。この方法は、有機合成発酵を融合したような物質生産の方法です。水(液体培地)と油は混ざらないので、この培養液は二相になります。当研究室では、この方法で、ステロイドホルモン生産や青色染料のインジゴの生産などがなされています。
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この他に、有機溶媒耐性微生物は、
○原油流出事故などにおける疎水性有機化合物による環境汚染の際のバイオレメディエーションへの応用
○バイオ燃料の生産
○疎水性有機化合物の生産
などへの応用が期待されています。

有用酵素の探索と応用

当研究室ではデンプン加工技術や臨床検査などに利用できる有機溶媒耐性微生物などの極限環境微生物由来の酵素を探索し、これらの性質について調べてきました。
これまで報告した主な酵素は、以下のとおりです。
○マルトオリゴ糖生成アミラーゼ
○シクロデキストリン合成酵素(アミラーゼ)
○コレステロールエステラーゼ
○コレステロールオキシダーゼ

このうち、当研究室で発見したChromobacterium 属細菌DS-1株由来のコレステロールオキシダーゼは、これまで知られているコレステロールオキシダーゼの中では最も耐熱性が高く、有機溶媒や界面活性剤に対しても高い耐性を示すことが分かり、研究を進めています。コレステロールオキシダーゼやコレステロールエステラーゼは主に血中コレステロール濃度の測定に使用される臨床検査用酵素として用いられています。
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さいごに

地球上には変わった(微)生物がたくさんいます。
この様な生物の中には、人間に役立つものをつくるものがいます。
そういった微生物や酵素の研究に興味のある方、研究室に来て下さい。