複雑な構造をした物質を分解する微生物たち

 

 植物は実に様々な構造を持つ物質を生合成します。これらの物質はやがて落葉などで土壌に供給されますが、土壌中にはこれらの物質の多くは蓄積しません。

 サクラ葉に蓄積するクマリンも、抗菌性があるのにどうやら土壌微生物によって分解されているようなのです。冬にサクラの木の下を歩いても甘い香りはしないでしょう?たまにふんわり匂うこともありますが。。

 そのような観点で、サクラの周りからクマリンを分解する微生物の単離を行いました。すると土壌だけでなく、サクラの葉を食害する幼昆虫の腸管から高い分解能を示す微生物が単離されました。


 一方、古くからクマリンの微生物の分解については研究されていました。クマリン、というよく知られた物質を扱っていると、いつも先人達の研究に行き当たり、感服させられるのですが、現代にあっては古いこともあって注目されていないこともしばしばです。クマリンの微生物分解がまさにそれに当たりました。1970年代に精力的に研究され、その後、これといった研究が進んでいる訳でもないのです。


 現在私たちの研究室ではこの微生物の代謝の分析を行っています。敢えて、この微生物に着目することで、サクラとクマリン、そしてその周辺の微生物の間にある密接な関係に迫れるのではないかと研究を進めています。


 植物はどうやら単独では生きていないようです!