1999年10月20日(水)23時06分 概念:システム運動 2 1 システム思考をテーマにした科学運動には,大きく2つの流れがあるように思います.  ひとつは,人間をとりまく世界をどう認識し,理解するかに関心がある研究で, ベルタランフィー,ボールディング,ラズローにつながっていくものです. システム哲学とも言えるものです.  もうひとつは,工学的実現を意図する研究や問題解決のための方法の研究で, サイバネティクスや制御理論から始まり,オペレーションズ・リサーチや ソフトシステム・アプローチを含む方向のものです. これらをシステム工学といっていいかも知れません.  もしも強いて第3を抜き出すならば,ほかの学問領域への応用という方向 もあります.  システム運動は現在でも続いていると私は感じている. しかし,もはやシステム思考だけをテーマにとりあげて何かをいうことは少ない. すでにシステム思考は常識のようになってしまっており, むしろ次の段階の(より深いあるいは特殊なシステムの)テーマが研究課題になっているように私は感じます. 1999年10月20日(水)23時10分 概念:システム哲学 2 1 システム哲学の文献としては,思い付くままにいうと, ベルタランフィー『一般システム理論』みずず書房(1974) K.E.Boulding "General Systems Theory : the skelton of science" General Systems Vol.1 (1956) ラズロー『システム哲学入門』紀伊国屋書店(1980) 昔は,こんな文献を見てましたね.最近では, 河本英男『オートポイエーシス』青土社(1995) が面白かったです.河本さんは,マツラーナの枠組みのうち 「入力出力がない」ということの解釈がルーマンとは異なるといってます. 1999年10月20日(水)23時12分 書籍:システム工学(問題解決) 2 1 問題解決や工学的実現を意図するシステム思考には,ハードシステム方法論からソフトシステム方法論,混在型方法論へと興味の焦点が変わってきているようですね.  ハードからソフトへの変革期に書かれた本として, P.チェックランド『新しいシステム・アプローチ』オーム社(1985) は秀逸だと思います.混在型の提案としては, M.Jackson Solving Problem Solving xx (1995?) と聞きました.適宜使い分けるという意味の,いわゆる方法論的相補性というやつですね. 1999年10月20日(水)23時13分 書籍:ほかの学問領域への応用 2 1  システム思考の他の学問領域への応用については,うわさ程度しか知らないのですが, 社会学では最近,ルーマンの社会システム論の翻訳がでたそうです. 経営学ではバーナードの有機体論から始まって,ホロン経営学まで,システム思考アプローチは得意とする所でしょう. 1999年10月20日(水)23時14分 書籍:日本のシステム研究 2 1  1986年ころ日本のシステム論研究者が集まり,society of general systems researchの日本支部として,GSR( general systems research )研究会を開催した.この討論の結果は,サントリー財団の資金援助を得て, 公文俊平・高原康彦『一般システム研究の成果と展望』GSR研究会(1987.4) となって結実した.これは研究会資料なので,果たして図書館にあるのかどうか分からないが,ともかくそんな文献もあった. 1999年10月20日(水)23時15分 ---:複雑系という騒ぎ 2 1 もともと社会科学の対象は複雑系なんですよ.だって,人間や人間同士の関係を要素とする複雑なシステムなんだから.いまさら創発とか自己組織化とかいわれても,そんなもなあ昔から知ってましたよ.というのが社会科学の研究者の偽らざる心境ではないでしょうか.  むしろ,最近は,理工学系の人が,やっと複雑なシステムについて研究し初めたというのが真相ではないでしょうか.かれらは,新しい数学やコンピュータという便利な道具がでてきたので,それを利用している.もちろん,できることはバンバンやって論文を生産する.でも複雑系という科学は「まだ,ない」.これからつくろう,という状況です.  本当に社会科学を勉強している人は,さまざまなシステムのアラが見えるはずです.自分の研究領域からの新しい提案もできるはずです.理工学との相互協力の時代に入ったといえるかも知れません.眼力が必要です.恐れない,ごまかされないことが重要ではないでしょうか. 1999年10月20日(水)23時16分 会議:システムダイナミクス 2 1 日時:3月24日(火)3時30分から5時頃まで 場所:東工大 大岡山 西3号館6階 W461講義室 講師:DC Lane (Lecturer LSE=The London School of Economics and PoliticalScience) テーマ:Social Theory and System Dynamics Practice 参加費:無料 その他:講師は、システムダイナミクスだけでなく特にSSMを中心としたソフトシステムアプローチ全般について広い関心を持った新進気鋭の研究者。どちらかといえば、ハードな感じの強いシステムダイナミクスの現状に必ずしも満足しておらず、ソフトシステムとの関係についても当然言及されるはずです。 主催:経営情報学会のシステム知部会、情報型組織部会・意味のモデル部会 1999年10月20日(水)23時17分 書籍:階層システム理論 2 1 階層システム理論(この順序で読むと分かりやすいと思う)<p> [1] 旭貴朗「階層システム」高原康彦,中野文平編『経営システム』日刊工業新聞社(1991)<br> [2] 高原康彦「階層的意思決定」宮沢光一編『経営意思決定』ダイヤモンド社 (1983)<br> [3] M.D.Mesarovic A.Macko Y.Takahara Theory of Multi-level multi-variable and Hierarchical Systems Academic Press (1969) 日本語訳は研野和人監訳『階層システム論』共立出版(1974)<br> 1999年10月20日(水)23時18分 書籍:数理的一般システム理論 2 1 数理的一般システム理論<p> [4] M.D.Mesarovic & Y.Takahara General Systems Theory: a mathematical foundation Academic Press (1975)<br> [5] M.D.Mesarovic & Y.Takahara Abstract Systems Theory Springer-Verlag (1989)<br> 1999年10月20日(水)23時19分 概念:システムダイナミクス 2 1 1.理論  システムダイナミクスとは,    差分方程式で表現できる因果的現象を,    コンピュータで,    時間を追ってシミュレーションする というものです. 現象を差分方程式で表現できる人にとっては, 理論を理解するのは簡単です (したがって,それ自身の研究としてはずいぶん昔に終わっています).  しかし,これがおもしろいのは,方程式が苦手な人のために, 図形を使って現象を表現するという工夫をしているところです. 2.ソフトウエア  図形を使って現象を表現することができるということは, 1)コンピュータを使って絵を書くことができる ということです.絵ができれば, 2)コンピュータを使って計算することができる. ということにもなります.  というわけで,各種のシミュレータが販売されてます. Macintoshでは,ステラ(Stella)というのがあります. わたしの経営工学の授業で使った教科書, 高原康彦『経営システム』日科技連のpp.40-43 に紹介されてます. 3.応用  しかし,その方法またはソフトウエアを使って, どんな現象をシミュレーションするのか, ということが重要なわけです.  最初にいったように, システムダイナミクスは差分方程式で表現できる現象を扱います. 差分方程式で表現できる現象は,実は非常にたくさんある. だから多くの現象が,これで表現できて,計算できる.  20年前に誰だったか,コンピュータで, 地球上の酸素や二酸化炭素の量を計算して このままでは人類が滅亡することを予測したのは有名です.  最近では, 経営に必要な分析にこれを使うことを提案している人もいます. 4.勉強のしかた  わたしは,授業でこれはやりません.  基本的な本を読んだり,システムダイナミクスをキーワードにして ホームページを探索して見たらいいかも.