訂正
および
進化的安定状態の求解




1.訂正

定義1の不等式に「for any q≠p」を追加してください.その結果,
  u(p,(1-e)p+eq) > u(q, (1-e)p+eq) for any q≠p
となります.

命題2第2の不等式に「for any q≠p」を追加してください.その結果,
  if u(p,p)=u(q,p) then u(p,q) > u(q,q) for any q≠p
となります.

命題3条件3)に「pと異なる」を挿入してください.その結果,
  3)Support(q)= {i | u(i,p)=u(p,p)}であるような,pと異なる任意のqに対し,
    u(p,q) > u(q,q)
となります.


2.進化的安定状態の解法

例題:
 タカハトゲームでC=4, V=2としたときの進化的安定状態(ESS)を求めよ。すなわち,

   H    D
-------------------
H  −1   2
D   0   1
-------------------

に対して,
問1.多型集団として,進化的に安定な「人口分布」を求めよ.
問2.単型集団として,進化的に安定な「混合戦略」を求めよ.

解答(問1)

進化的に安定な人口分布を p = (p1, p2)とする.このとき,
  u(1,p) = -p1 + 2*p2
  u(2,p) = p2
  u(p,p) = -p1*p1 + 2*p1*p2 + p2*p2
である.さて,p1=p2=0はありえないので,場合は3種類ある.

場合1
 p1=0を仮定すると,p2=1-p1=1である.ゆえに p=(0,1).
このとき,u(2,p)=u(p,p)=1となり,命題1に矛盾しない.

場合2
 p2=0を仮定すると,p1=1-p2=1である.ゆえに p=(1,0).
このとき,u(1,p)=u(p,p)=-1となり,命題1に矛盾しない.

場合3
 p1とp2がともに0でない場合.命題1より,u(1,p)=u(2,p)=u(p,p)が成り立つ.u(1,p)=u(2,p)より,p1=p2= 1/2 を得る.ゆえに,p=(1/2, 1/2).
このとき,u(1,p)=u(2,p)=u(p,p)=1/2は確認できる.

 したがって,定常状態は p=(0,1),p=(1,0),p=(1/2, 1/2)の3つである.
これらの3つに対して,安定分析をすればよい.
離散時間軸のダイナミクス,あるいは連続時間軸のダイナミクスを,コンピュータにプログラミングして,シミュレーションを行うと,p=(1/2, 1/2)だけが安定である.
簡略ダイナミクスでは,手計算で安定分析を行うことができる.
 dp1/dt = [(-1+0)p1 + (2-1)(1-p1)]p1(1-p1) =(1-2p1)p1(1-p1)
の符号(正負)を,各定常状態のまわりで調査すればよい.その結果,p=(1/2, 1/2)だけが安定であることが分かる.
また,このやり方を連続時間軸のダイナミクスに適用することもできる.


解答(問2)

進化的に安定な混合戦略を p = (p1, p2)とする.このとき,
  u(1,p) = -p1 + 2*p2
  u(2,p) = p2
  u(p,q) = -p1*q1 + 2*p1*q2 + p2*q2
である.

Step1. 定理3条件1)を使って候補を求める.その方法は,問1の解答の定常解を求める方法(場合1〜場合3)とまったく同じである(実は,混合ナッシュ均衡解を求めていることでもある).よって, p=(0,1),p=(1,0),p=(1/2, 1/2)の3つを得る.以下では,これらが定理3条件2),3)を満足するかどうかを確認する.

Step2.
 p=(0,1)のとき,p1=0である.このとき,u(p,p)=1 < 2=u(1,p) なので,定理3条件2)を満足しない.よってこれは進化的安定状態(戦略)ではない.

 p=(1,0)のとき,p2=0である.このとき,u(p,p)=-1 < 0=u(2,p) なので,定理3条件2)を満足しない.よってこれは進化的安定状態(戦略)ではない.

 p=(1/2, 1/2)のとき,p1とp2は0でないので,定理3の2)の確認は不要である.ついでに,Step1より,{i | u(i,p)=u(p,p)} = {1,2}が確定する.

Step3.
 p=(1/2,1/2)のとき,Support(q)={1,2}であるようなqは,q =(q1,q2)の形をしている.ただし,1> q1 >0,1> q2 >0.このとき,q2=1-q1より,
  u(p,q)=-(1/2)q1+(3/2)q2=3/2 - 2q1
  u(q,q)=-q1*q1 + 2*q1*q2 + q2*q2= 1-2q1*q1
を得る.qがp=(1/2,1/2)と等しくない限り,u(p,q) > u(q,q)なので,定理3の3)を満足している.

 以上より,p=(1/2,1/2)が進化的に安定な混合戦略であることが分かる.

別解(問2)

進化的に安定な混合戦略を p = (p1, p2)とする.このとき,
  u(1,p) = -p1 + 2*p2
  u(2,p) = p2
  u(p,q) = -p1*q1 + 2*p1*q2 + p2*q2
である.

Step1. 定理4より,p=(1/2, 1/2)だけが候補である.
これに対して,u(1,p)=u(2,p)=u(p,p)が成立する.
つまり,定理3の1)は確認できる.

Step2.
 p=(1/2, 1/2)のとき,p1とp2は0でないので,定理3の2)の確認は不要である.ついでに,Step1より,{i | u(i,p)=u(p,p)} = {1,2}が確定する.

Step3.
 p=(1/2,1/2)のとき,Support(q)={1,2}であるようなqは,q =(q1,q2)の形をしている.ただし,1> q1 >0,1> q2 >0.このとき,q2=1-q1より,
  u(p,q)=-(1/2)q1+(3/2)q2=3/2 - 2q1
  u(q,q)=-q1*q1 + 2*q1*q2 + q2*q2= 1-2q1*q1
を得る.qがp=(1/2,1/2)と等しくない限り,u(p,q) > u(q,q)なので,定理3の3)を満足している.

 以上より,p=(1/2,1/2)が進化的に安定な混合戦略であることが分かる.