The Orient: 東洋大学RoboCupチーム

RoboCup 中型リーグ春季競技会2005 報告

(ジャパンオープン2005中型リーグ相当)

最終更新日 2005-05-04 19:10


中型機リーグの春季競技会の概要

期間: 2004年5月1日〜4日
場所: 「金沢工業大学 夢考房」 (金沢市久安2-222 Tel. 076-280-8578)
報告者: 松元明弘
備考: 例年は「RoboCupジャパンオープン」という形で開催しているが,今年は7月に大阪で世界大会が開かれるため,経費節減を目的として各リーグで分散開催することになった.そのため「競技会」という名称を使っている.

公式記録は, Robocup中型リーグ春季競技会のページ に掲載されます.このページには,RoboCup日本委員会のページからリンクが貼られるはずです.以下は,参加者としての記録速報です.

参加チーム: 以下の8チーム(順不同)

今回は時間の制約から変則総当たり(総当たりだと7試合だが今回は5試合)とします. 5月2日から予選が始まり,予選を1日2試合ずつ3日間行い,最終日に予選の最後の試合を行なって予選順位を確定し, その後,準決勝2試合と決勝を行います.3位決定戦は行いません.


我々のチーム The Orient の概要

我々東洋大学のRoboCupグループは,2002年の福岡でのRoboCup国際大会まで UTTORI United として 宇都宮大学・理化学研究所と共に合同チームを構成していましたが, 2003年のジャパンオープンからは東洋大学単独で The Orient というチーム名で参加しています(Theを付け忘れないように!).今年はThe Orientになって3年目になります.

我々のロボットの構成は以下の通り:

Rook
主にGKだったが,今大会ではMFとして活躍.
3自由度独立の全方向移動機構.全方位視覚.
Linux使用.UTTORI2000以来の古参.

Mamiya
MFまたはGK 四輪独立駆動型の全方向移動機構.全方位視覚.
Linux使用.UTTORI2002にデビュー.

Ariel
FW 四輪独立駆動型の全方向移動機構.車輪には市販のOmniWheelを使用.
Linux使用.今大会では一番安定して動いている.

Akky (旧Gonta)
GK Windowsコントローラ構築の評価用として採用.
お古の二輪駆動機構を再利用.IEEE1394の全方位視覚,
IEEE1394のモータコントローラ.
昨年は犬の形で人気を博したが,全方位カメラを支える支柱が首に似ていることからボディも鳥の形に変えた.
ボールを発見すると音(声)を出すことにより,ロボットの内部状態がわかるようにしている.

チームメンバーは以下の通り:

以上8名.

遠征日程:
4月30日(土) 出発
5月 1日(日) 会場設営の手伝い,準備作業
5月 2日(月) 予選1日目
5月 3日(火) 予選2日目
5月 4日(水) 予選3日目,決勝,撤収作業
5月 5日(木) 帰途
荷物の搬送に関しては,通常は日通のアローボックスを利用しているが,日通の都合により今回は使用できず,
代わりにレンタカーを借りて自分たちで運んだ.


試合結果速報

以下は,個人的感想も含んだ,試合の報告です.


予選1日目

第1戦 5月2日12:00-13:00
vs DIT-RC
2-0
得点者
自殺点 1
Mamiya 1

 初戦開始.今までGKだったRookをフィールドプレーヤとし,AkkyをGKとする.Orientは,練習に使っていた古い(汚れた)ボールで色調整したが,試合では新品のボールのためボールの色をうまくとらえられない.むしろ相手のカラーマーカーである紫をボールのオレンジ色と誤認識し,相手へのチャージングでファウルを取られる.RookとMamiyaが特にその傾向が強い.DIT-RCもうまく動かず,自分のフリーキックでも蹴らない.両方とも動きの少ない間延びした試合.途中GKであるAkkyの駆動系のスイッチが入っていないという人為的ミスもあったが,相手の不具合に助けられ,前半は 0-0 で終了.

 後半はOrientが自陣で動き回っているうちに,相手が味方同士でボールを取り合い自殺点で1点獲得.その直後,相手ゴール前でフリーキックをもらうが決められずやきもき.そうやっているうちに相手のすきを縫ってMamiyaが単独ドリブルでシュートして得点.結局 2-0 で勝利.

付記: 第1戦はどのチームも不調.その原因の一つは,それぞれのロボットの問題以外には,スタートやストップの信号を管理するレフェリーボックスと各チームのロボットやコーチボックスの間の通信の問題のようだ.無線LANと有線LANの接続がうまくいかないことがある.無線LANのアクセスポイントに接続数制限があるのかもしれない.世界大会ではアクセスポイントを2台使うよう提案したほうがよいのではないか? またロボットOrientはWindowsのリモートデスクトップが通信を占有し,他が通信できない状況があった.WindowsはLinuxに比べて通信の優先度が高いのかもしれない.またどのチームのロボットも行う画像処理において,午前中は直射日光がはいるため(紙で遮光してあるがそれでも明るい)その影響が出ているように思える.


第2戦 5月2日17:00-18:00
vs WinKIT
1-4
得点者
Ariel

 WinKITは金沢工業大学の学長の視察があり,午前と比べて調整してきた(緊張感は必要!).前半はそれでも5台の内3台くらいしかボールに絡まない.OrientはRookやMamiyaが不調による自主的入退場を繰り返すが,Arielがよくボールを捉えられるようになり(午後になって直射日光が入らなくなったせいか?)孤軍奮闘する.なんとか耐えていたが相手に押し込まれて前半は 0-1 で終了.

 後半開始直後,Ariel以外は動きが悪い.自陣でMamiyaがペナルティエリアに10秒以上留まるが,反則を取られる前に失点.直後に再び似たような状況で失点.CKを得るが動かずニュートラルスタートで,Arielが得点.直後にゴールがら空きから中距離で失点.Mamiyaは画像を取れなくなった(退場時にチェックしたら全方位カメラのケーブルがカメラから外れていた.ねじ止めできなくなっていた.こういうミスはいけない).Rookは以前までの信頼性がうそのようで動かない.ネットワークからの信号も受け取っており,遠隔での動作もできるので,画像のソフトの問題かカメラ関係のハードの問題か?


初日終了時点で,Orientは1勝1敗0分けで8チーム中暫定4位.
(ここまで5月2日17:45記)


予選2日目

第3戦 5月3日13:00-14:00
vs FC-Soromons
3-0
得点者
Ariel 2
Rook 1

 相手は3台でスタート.相手GKはよくボールを捉えているがフィールドプレーヤはあと1台いるはず.Orientは4台でスタート.新しいボールでしかも色が他のボールより薄いので,ゴールやポールの黄色との区別が難しい.さらに,照明によりボール上部が白く見える.さて試合中Arielがフリーとなり,正面からの5mシュートが相手GKに当たって入るラッキー.続けてArielがフリーで右斜め前から5mシュートし得点.RookとMamiyaはボールが離れるとボールが見えなくなり,動き出さない.GKのAkkyは活躍の場がなくひまでいる.前半は 2-0 で終了.

 後半も同じ陣容でスタート.スローインからRookがドリブルし,ゴール前でフリーとなるもなかなかキックせず,なんとかゴール.Rookの今季初得点.しかしながら相手のフィールドプレーヤは1台となっていた間もなかなか攻めきれない.盛り上がりに欠ける内容ではあったが,ともかく勝利を得た.


第4戦 5月3日17:00-18:00
vs Trackies
2-2
得点者
Ariel 2

 相手のリクエストにより遅れてスタート.不具合があったか? Arielが相手GKと絡み合うが相手の反応が遅れたところを押し込んで得点.阪大Trackiesに対してはおそらく今までで初の得点リード.しかしRookもMamiyaが相変わらずうまくボールを捉えられない.Arielはまずまず.自陣でボールをRook,Mamiyaと相手でボールをはさみながら並進し,そのままゴールの中に入り失点.同点となる.Trackiesはすべてのロボットが何らかの動きを示すが,単発の動きに留まり,そのまま前半終了.

 後半は一進一退.活躍のArielがゴール裏に行ってしまった間にゴールの空きスペースができ,相手に押し込まれて失点.その直後に(これを書いている間に)Arielが得点し,同点になる.このあたりから観客が増えてくる.特にTrackiesと上位を争うEigenメンバー(とそのOB)が自分たちの調整の手を休めて観戦(OBがたくさん集まってくるのはすばらしい).ボール取り合いの攻防が続いてそのまま試合終了.我々としてはねらいどおりの引き分けとなり,決勝トーナメント進出の可能性が残った.


予選2日目を終了して,2勝1敗1分けで暫定4位
(ここまで,5月3日18:40記)


最終日

第5戦 5月4日10:00-11:00
vs EIGEN
0-6
得点者
なし

 時間どおり試合開始.定時に始められる試合はあまり多くない.前半はArielがんばる.相手にうまくくらいついてディフェンス.これはうまい.自陣ゴールキック後,ゴール右前からゴール左に向けての相手シュートで失点.つづけてセンターライン付近から転がったボールがそのままゴールインで失点.続いて似たような状況で失点.ほとんど自陣で試合が進行する.スローインからそのままゴールに向かってドリブルシュートされまた失点.相手もソフト面でもハード面でもいろいろな試行錯誤をやっている模様で最高調子ではないようだ.1台は走行時に異常音を発生していた.タイミングベルトの緩みか?前半は 0-4 で終了.

 後半はArielは再起動中で参加できず.自陣ゴールキックをMamiyaがうまく蹴れない間に10秒たって相手がシュート,失点.MamiyaとRookが2台ペナルティエリアに入り illegal defenseで反則となりゴール前FK(実質PKだ!).似たような状況でこれが4回続くが相手シュートはすべてGKのAkkyの正面で何とか耐える.その後相手スローインからのドリブルに対して,GKのAkkyが斜めを向いている間に失点.Akkyは車輪機構の構造上,左右には動けるが前後には動けない.後半は好調のArielが攻守であまりボールに絡めなかったのが残念.それでも後半の失点は2点に留まり,試合は 0-6 で終了.4位になって決勝トーナメントに残るかどうかは13時からのHibikino-Musashiの結果次第である.


予選試合結果

チーム名
EIGEN Trackies
DIT-RC WinKIT
Hibikino
Soromons
Orient
Scarab 試合数 勝ち 引分け 負け 勝ち点 得失差 順位
EIGEN
(慶応大)
- なし
なし
5月3日10:00

3-2
5月2日10:00

1-0
5月2日14:00

3-0
5月4日10:00

6-0
5月3日16:00

7-0
5
5
0
0
15
+18
1
Trackies
(大阪大)
なし
- 5月3日11:00

3-0
なし
5月2日15:00

1-0
5月2日11:00

5-0
5月3日17:00

2-2
5月4日11:00

8-0
5
4
1
0
13
+17
2
DIT-RC
(大同工大)
なし
5月3日11:00

0-3
- 5月3日15:00

0-9
なし
5月4日12:00

2-0
5月2日12:00

0-2
5月2日16:00

2-1
5
2
0
3
6
-11
5
WinKIT
(金沢工大)
5月3日10:00

2-3
なし
5月3日15:00

9-0
- 5月4日13:00

6-0
なし
5月2日17:00

4-1
5月2日13:00

3-0
5
4
0
1
12
+20
3
Hibikino-Musashi
(九州工大,北九州市立大,FAIS-RRI)
5月2日10:00

0-1
5月2日15:00

0-1
なし
5月4日13:00

0-6
- 5月3日18:00

2-2
なし
5月3日12:00

2-0
4
1
1
3
4
-6
6
FC-Soromons
(福井大)
5月2日14:00

0-3
5月2日11:00

0-5
5月4日12:00

0-2
なし
5月3日18:00

2-2
- 5月3日13:00

0-3
なし
5
0
1
4
1
-13
7
The Orient
(東洋大)
5月4日10:00

0-6
5月3日17:00

2-2
5月2日12:00

2-0
5月2日17:00

1-4
なし
5月3日13:00

3-0
- なし
5
2
1
2
7
-4
4
Team SCARAB
(近畿大,近畿印刷組合)
5月3日16:00

0-7
5月4日11:00

0-8
5月2日16:00

1-2
5月2日13:00

0-3
5月3日12:00

0-2
なし
なし
- 5
0
0
5
0
-21
8

予選結果 (確定)
1位 Eigen(慶応大学)
2位 Trackies(大阪大学)
3位 WinKIT(金沢工業大学)
4位 Orient(東洋大学)


準決勝1 5月4日15:00

Eigen(予選1位) vs The Orient(予選4位)
4-0
(前半1-0,後半3-0)

 今朝の第一試合と同じ対戦.大差が予想されるがしかしながらOrientの各フィールドプレーヤが今回はうまく相手に体を寄せて自由にさせない.強い相手に対しての粘り強い戦い方だ.しかしゴール前空いたところにシュートされ失点.大量点の不安がよぎるが,ArielもMamiyaもRookもよいディフェンスをして耐える.前半は 0-1 で終了.

 後半はもみあいながら,一進一退の状況が続く.Arielが一時退場したときに相手に押し込まれ失点.Mamiyaがゴール横からクリアするが相手への絶妙なセンタリングになり失点.続いてすばやい動きでEigenらしいシュートで失点.実はこのころOrientの複数のロボットはメカ的な不具合があったり,OSがシステムダウンしていたりした.それでもなんとか耐え忍び,後半は 0-3 に留まり,結局 0-4 で敗退.後半の最後になってEigenはEigenらしさがでてきた.さすが世界大会優勝経験チーム.それを相手にOrientよくやったと言えよう.3位決定戦はやらないということなので,同率3位ということでトロフィーをもらえることが確定した.学生たちの健闘に拍手を送りたい.


準決勝2 5月4日16:00

Trackies(予選2位) vs WinKIT(予選3位)
3-0
(前半1-0,後半2-0)

予選にはなかった対戦.WinKIT優勢かと予想していたが,Trackiesが善戦.WinKITのすきをぬってTrackiesが得点し,前半は 1-0 で終了.後半はTrackiesのスローインから10mほどのキックがそのまま入ってゴール(大会開始時のチームリーダーミーティングで,キックオフ以外のセットプレーはすべてダイレクトフリーキックとみなす,と合意していた).その後,攻防が続くが,Trackies再びスローインからダイレクトでゴール.後半は 2-0 で,結局 3-0 でTrackiesの勝利.


決勝 5月4日18:00

Eigen(準決勝1の勝者) vs Trackies(準決勝2の勝者)
1-0
(前半1-0,後半0-0)

予選1位と予選2位の対戦ということで順当な組み合わせとなった.報告者は主審をやっていたので詳細は書けないが,両チームとも不調退場がほとんどなく合計10台が流れるように動いていた.信頼性が高いということと,チームが強いということはかなり相関があると言える.決勝戦にふさわしい,手に汗を握る攻防であった.試合は 1-0 でEigenの勝利であったが,どちらが勝ってもおかしくない内容であった.両チームとも7月の世界大会でも上位に入り込むに違いない.主審の側から見ると,大会開始時に決めた「フリーキックの扱い(キックオフを除き直接フリーキックとみなす)」や illegal defence/offenseの取り方によっては違う結果になっていたかもしれない.大会におけるルール確認,審判のルール適用方法など十分に事前確認する必要があると感じた.

(ここまで,5月4日19時記)

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written by Akihiro MATSUMOTO
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