フランス滞在報告 番外編

1995 年 4 月 工学部 松元明弘

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(1) アパートの契約

 アパートの契約に関しては,国際交流プログラムのおかげで問題ありませんでした. ルイパスツール大学の国際交流担当のフラザキエ女史と 事前に電子メールで連絡を取り合い,希望を伝えてあったので, ストラスブール到着日から用意されたアパートに暮らすことができました. 企業や研究所から来ている人は 最初はホテル住まいで家探しを1か月位したという人が数人います. ストラスブールの住宅事情を考えると, 私の場合には非常にラッキーだったと言えます.

 私の入居したアパートは家具付きで100平米くらいの広さです. 居間,食事室,寝室2つ,台所+食事スペース,洗面所(風呂付き), トイレという部屋構成です. 建物は古く,床が薄いので階下の人に騒音の点で迷惑をかけたようですが, とにかく家が広くて天井が高く,日本ではできない快適な生活を送りました. 家具付きということで,冷蔵庫,洗濯機,掃除機,ソファ,テーブル,椅子, 洋服ダンス,ラジカセ,タオル,シーツ,電灯など,ほぼ揃っていました. ただ電子レンジはありませんでした(オーブンはありました). また居間,食事室,寝室には質素ながらもシャンデリアが下がっていますので, 最初はびっくりしました. ただ電灯はすべて白熱灯で,蛍光灯に慣れた我々には異様に黄色く,かつ暗く感じます.

 アパートの場所は市の中心から 2,3 kmのところで, バスが2路線,後に市電が近くを通り, 閑静な住宅地でありながら 徒歩圏内に銀行,郵便局,電話局,市場,商店街,レストラン, 加えて日本食の食材の店もあり, 息子が半年通った小学校も窓から見えるほどの距離にあり, 極めて生活に便利な場所でした.

 家賃は,電気,水道,暖房,駐車場(車庫)および税金込みで (ガスはありません.台所のレンジも電気です), 月に5600フラン(1フラン=18円として,100800円)です. これは銀行振替で支払いです. ちなみに保証金が10000フランで, こちらは銀行振込でなく小切手で渡すのが普通だそうです. すなわち契約の終了時に(もし何も問題がなければ)目の前で破り捨てるのだそうです. 物価水準を考慮すると家賃はやや高いように思いましたが, 色々な人に聞いてみるとリーズナブルな値段,むしろやや安いくらいの値段のようです.


(2) 銀行口座の開設

 銀行口座の開設にはこちらの銀行システムの理解が必要です. たとえ言葉が通じたとしてもとても自分一人ではできません. ましては言葉が通じないのでは一人では交渉できませんので, 現地の人の手助けが必要です.

 ところで銀行は,口座の開設のためにアパートの契約書以外にも ちゃんと住所の確認できるものを用意せよと言って, 電話代の請求書を持ってこいというのにはあきれました. 電話代などの料金の引き落としこれからやろうというのにですよ. それはなんとか国際交流担当のフラザキエさんがなんとか交渉してくれましたが, 不思議の国の始まりと言うべき問題でした.

 こちらの銀行口座には通帳というものがなく, また銀行カードとクレジットカードが一枚に統合されています. 銀行カード部分はカルトブルー (Carte Bleue)といってその名のとおり青いカードです. クレジットカードはほとんどの銀行の場合 VISA です.

 さてこのカードでフランス国内のどこの銀行・郵便局でも 手数料無しでお金が引きおろせますし, さらに買い物の時にも 暗証番号4けた(と緑色の入力キー(valideと書いてあります))を レジで入力するとサインなしで支払いができます (時々番号入力の代わりに署名を要求されることもあります). クレジットカードだとサインが必要ですので, この機能はフランスでは一般化している小切手の代わりということです. 非常に便利で,できるだけ現金を介さないようになっているわけです. ところが,現金払戻しの控えにすら口座の残高が表示されませんので (残高照会は別の操作で可能ですが), 払戻しの控えとカルトブルーでの支払い記録とから, 赤字にならないように残金を計算しておかなければなりません (一時的に赤字になっても構わないようですが,利息を要求されるようです). 私の使っている銀行(BNP)の場合には, 各月初めの5日頃に前月末までの使用一覧が打ち出されて送られてきます.

 そういうわけで, クレジットカード機能があるために口座の開設には信用付与が不可欠で, 私の場合大学の教員ということでまだ手続きが容易だったようですが, それでもこのカードを受領するまでにかれこれ3週間かかりました.


(3) 電話の開設

 電話の開設はアパートの契約書を電話局に持って行って, その日に電話機をもらいました. あらかじめアパートに配線がすんでいるために手続きは容易でした. 自分で端子に接続し, 数日後に発信音がなるようになるので電話局に接続願いをして (確か当時はダイヤル13で無料でした.) , 即座に使えるようになりました. 電話代は2カ月に1回請求が来ます.電話料金は日本よりだいぶ安いようです.

 余談ですが,電話機をもらってから実際に通話ができるようになるまでの間に 5日ほど待たされました. というのは, 復活祭(イースター,フランス語ではパックといいます)の休みが入ってしまって, 普通復活祭の休みは日曜日とその次の月曜日だけなのですが, ここアルザスではドイツの影響でその前の金曜日も休みなのです. 土曜日は電話局は休みですから(商店やスーパーは開いていますが), 空白の日々が長くなってしまったという訳です.


(4)車の購入,保険の加入

 車は生活に不可欠です. 日曜日はお店はあいていませんから, 平日または土曜に買い物をまとめてすることになりますので, 車があるとないとでは生活がまったく変わってしまいます. 私の場合はフランスに入国して1ヵ月はいろいろと物色して, 結局,近所の日産の販売店(ルノーの新車も売っています)で, 日産プレーリーという車を買いました. 6年もの(1988年)の中古車で,13万KM走っていて, 29500フラン(1フラン18円として約53万円)でした. ここでは10万KM走っている車は普通です. 支払いにはCB(Carte Bleue)/VISAカードを使いました. フランスで発行されているCB/VISAカードならば, 車のように高額のものでもカード会社から承認を受ければ使えます. ちなみに新車は結構高くて,9万フランは出さないとまともな車はありません. 最近やっとエアコン付きのものが一般にも出始めました.

 車の保険に関しては,経済学部の今村先生の助言通り, 日本の保険会社から「付保証明」を出してもらいました (保険会社からは何に使うのかと問い合わせがありましたが, なんとか発行してもらいました). これは何年間無事故で保険の請求がないこと, 割引率が何%であることが証明されています. 私は車に乗り初めてから7年間無事故で,55%割引でした. これをこちらの車会社の紹介してくれた保険会社に提出して 保険額を見積もってもらいました. tous risques という何でもカバーしてくれるタイプの保険で (これ以上高いものはありません), 他社では年間4800フランと言われましたが,私の契約した会社は4118フランでした. tous risques というのは相手車はもちろん自分の車に対しても同乗者に対しても カバーしてくれます. こちらの人は中古車にはそんなに保険をかけないようですが, 「フランス生活事典」にも書いてあるように,tous risques 契約をしておくと 事故の際に言葉の問題でうまく主張ができなくても 相手の主張を認めてその分を保険会社に払ってもらうことができますので, 保険に対する保険だと思ってtous risques の契約するのが無難だと思います. もちろん事故に会わないことが大切ですが.

 つい最近までは,車検制度はフランスではきわめてルーズでしたが, 欧州統合に伴い次第に強化され, 1996年からはドイツと同じように2年に1回受けなければならないようになります. 現在はその移行措置中で,今登録する車は新車でも中古車でも車検が必要です. そこで,車のフロントガラスには, 車両税の支払証明のシール(ビニェットvignetteと呼ばれ, その年の数字が書いてあります),車検証明,および自賠責保険加入証明の 3種類を明示していることが必要です. 車両税の支払いは,11月にたばこ屋で車両登録証(灰色の紙なので carte griseと 呼ばれます)を見せてvignetteを買うことでなされます. もちろん車の排気量や初登録年度により税額は異なります. それ以外の時には,収税事務所impot に出向いて支払う必要があります. 私のようにその年度に車両登録されていない中古車を買った場合にも 収税事務所に行く必要があります.

 これらの手続きは言葉のハンディキャップも手伝って結構面倒です. 仮にフランス語ができたとしても制度の理解がないと手間ひまかかります. 現地の人に手伝ってもらうといいでしょう.


松元明弘のホームページ

Edited by Akihiro MATSUMOTO akihiro@eng.toyo.ac.jp